幼少期に撮影を目撃していたことを明かした木村拓哉(C)ORICON NewS inc.
俳優の倍賞千恵子(84)、木村拓哉(52)、山田洋次監督(94)が29日、都内で開催中の『第38回東京国際映画祭』内で行われた映画『TOKYOタクシー』(11月21日公開)のセンターピース上映イベントの舞台あいさつに登壇した。
【写真】素敵…!山田洋次監督と抱き合う木村拓哉
本作は、フランスで初登場新作1位を獲得、2022年に日本でも公開されヒットしたフランス映画『パリタクシー』が原作。昭和から平成、令和と、日本に生きる人々を長年描き続けてきた山田洋次監督が、刻々と変化する大都市「東京」を舞台に、人生の喜びを謳いあげる、感動のヒューマンドラマ。倍賞は終活に向かうマダム・高野すみれ、木村は鬱々とした日々を送るタクシー運転手・宇佐美浩二を演じ、2人は“たった1日の旅”を通して心を通い合わせる。
イベントでは山田監督の『第38回東京国際映画祭』特別功労賞の受賞が報告された。安藤裕康チェアマンがトロフィーを手渡すと、山田監督は笑顔。厳かな空気となり、木村は会場へ「拍手が小さいですよ」と呼びかけると一層の拍手が起きていた。その後、倍賞と木村が花束を渡していた。
山田監督は「割に長生きしたからたくさん映画も撮ってきた。そのことで褒められて、こんな賞をいただけたと戸惑いながらも思います」と心境を語る。そして「今、思うのは僕が、その昔に映画界に助監督として撮影所に入ったころ、70年近く前は日本映画が充実していた。黄金時代だなと思います。まだテレビも普及していなかったし、アジア諸国、韓国も中国も映画らしい映画を作っていない時代でした。だから映画には大勢の観客が集まった。いわば娯楽の王座だった。そのころの映画界は豊かでゆとりがあった。その時代に比べると今は厳しい時代で今の映画人は苦労しながら映画を撮っている。時々、かわいそうだと思うこともあります。そういう時代であるからこそ、こういう映画祭が催されて、映画とはなんて素晴らしいのか日本、世界中の人と考えて鑑賞して称える。これからも映画祭が、大きい実りを映画界に与えてくれ続けてくれることを心から願ってやみません」と伝えていた。
途中、イスが用意され着席した山田監督。マイクから距離が開いたが木村がフォローを行うなど優しさあふれる一幕も。本作は山田監督の映画『男はつらいよ』シリーズでおなじみの東京・葛飾区柴又から物語が始まる。柴又と浅からぬ縁がある木村は「自分は幼少期に柴又に住んでいたことがあります。実際に『男はつらいよ』の撮影をして人だかりができていたところに、人だかり分の1として『何やっているんだろう?』と見ていました。撮影中に『僕、見ていたんですよ』と監督に言わせていただいたら、『そうなのか。君はいたのか』という言葉をいただきました(笑)」と振り返って笑わせた。
柴又は山田組が撮影を行うと活気が出るという。「山田組のスタッフだけ、共演者だけではない、現場全体の空気感で脈を打ち出した」と話した。常に創作意欲が衰えない山田監督。木村は「こういう先輩がいると、もう1回やる気が出ます」としみじみと語っていた。木村の言葉を聞いた山田監督は「どうもありがとう。木村くん」とほほえみ返していた。
TIFFは世界から監督や俳優、映画関係者などが集まるアジア最大級の国際映画祭。11月5日まで開催され、上演本数は184本となる。