女子用スラックスを着用する霧島高校の生徒(中央)=霧島市(同校提供)
制服に女子用スラックスを導入する鹿児島県立高校が4月から新たに、23校増えることが南日本新聞の調べで分かった。2021年度までに導入済みの11校と合わせ、制服のある59校(男子校の楠隼を除く)の約6割となる。各校は、性の多様性への配慮や、防寒、機能面も理由に挙げる。
4月から導入した明桜館は従来のリボンに加え、女子用ネクタイも準備。女子生徒約300人中、十数人がスラックスを購入予定だという。購入する2年森木陽菜さんは「冬場は寒いのでありがたい。スカートよりもズボンの方が好きなので、早くはきたい」。2年岡元仁美さんは「追加で費用がかかるため今回は断念したが、選択肢が増えたことはうれしい」と歓迎する。
21年度に導入した霧島の瀧道昭教頭は「性的少数者は声を上げづらいため、選択肢を準備しておくことが大切。ただ、ジェンダーの視点に偏るのではなく、機能面から着用する子がいることも知ってほしい」と話す。
南日本新聞の調べによると、2021年度までに導入したのは鹿児島水産、鶴翔など11校。22年度4月からの導入は鹿児島南、串良商業など23校だった。理由は「性の多様性への配慮」が93%で最も多く、次いで「防寒や動きやすさの機能面」が75%だった(重複あり)。「本人のファッション嗜好の尊重」「生徒募集」もあった。
検討中は、曽於、野田女子など13校。検討していないのは甲南、鹿児島中央など8校。セーラー服の学校がほとんどで、「スラックスと合わない」「伝統のある制服なので慎重にする必要がある」と悩ましげだ。
女子の選択肢が広がる一方で、男子用スカートの導入はゼロだった。担当者からは、性的少数者への配慮から導入の必要があると理解を示す声が聞かれるものの、「着用を認める前にトイレを男女共用にするなど環境整備が必要」「社会的にも男性のスカートは一般的ではなく、違和感がある」「デザインや販売に費用がかかり、実際にどれくらい需要があるか分からない」などがあった。
与論、奄美など4校は性別に関係なく制服を選べる「自由選択制」を採り、希望があれば男子生徒のスカート着用を認める方針だ。8割の生徒がバイク通学の与論は4月から女子用スラックスを導入し、スカート、リボンやネクタイの組み合わせも生徒が自由に選べるようにする。
小平英樹教頭は「全て学校指定の制服なので、組み合わせ方よりも、しっかりと着こなせることの方が大切。1人1人が快適に、自分らしく学校生活を送れる環境を目指す」と話した。