「薩摩翼竜」が化石の愛称に。クビナガリュウの近くでの発見は東アジア最古。1億年前の海と空をともに支配、魚やアンモナイトを追いかけた?

2022/07/23 13:55
太古の獅子島の海で魚を狙う翼竜とクビナガリュウを再現したイメージ図((c)川崎悟司)
太古の獅子島の海で魚を狙う翼竜とクビナガリュウを再現したイメージ図((c)川崎悟司)
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 翼竜(よくりゅう)化石を発見した時、研究チームで愛称を考えました。クビナガリュウ化石を「サツマウツノミヤリュウ」と名付けたので、薩摩つながりで「薩摩翼竜」でどうかと私が提案しました。強そうでカッコいいとなかなか評判が良く、愛称に決定しました。

 同じ地層のアンモナイト化石から、翼竜やクビナガリュウの生息年代が分かります。調べると、白亜紀(はくあき)後期の最初期である約1億年前を示していました。

 クビナガリュウと翼竜が近くで見つかった事例としては東アジア最古と判明したのです。巨大な爬虫類(はちゅうるい)が繁栄した白亜紀後期の幕開けにおいて、アジア近海に発達した生態系を理解する上で重要な発見になりました。

 化石が埋まっていた地層は、大陸棚のやや深い場所で河川から流されてきた土砂などが堆積してできたようです。クビナガリュウと翼竜は同じ海域に共存し、魚やアンモナイトの群れを追いかけて、狩りをしていただろうと推測できます。死体が沈み、海底で堆積物に埋もれ、化石化したのでしょう。

 国内では、北海道の三笠市周辺の白亜紀層で獅子島と似たような発見例があります。東京都市大学の中島保寿准教授らの研究チームが、クビナガリュウと翼竜の化石を発掘したのです。2018年に報告されました。

 21年夏の記者会見に合わせて、私たちの研究チームの一員である古生物イラストレーター川崎悟司さんが、白亜紀の獅子島(鹿児島県)の海域での翼竜とクビナガリュウによるハンティング風景を描いてくれました。同時代の空と海を支配した両者による、弱肉強食の激しい攻防が見事に再現されています。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。鹿児島県長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県」より)

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