子犬を抱いた第72振武隊・荒木幸雄少尉(中央)=南さつま市の万世特攻平和祈念館
鹿児島県南さつま市の万世特攻平和祈念館が開館30周年記念の特別企画展を開いている。「子犬を抱いた少年飛行兵」として知られ、万世から飛び立った陸軍特攻隊第72振武隊(しんぶたい)の荒木幸雄少尉(群馬県出身、享年17歳)の飛行服に縫い付けてあった隊のシンボルマークなど初公開10点を含む計33点を展示。遺品を通じ平和の尊さを発信している。31日まで。
第72振武隊は1945年5月25日に万世に到着。翌26日、飛行機に250キロ爆弾を取り付ける作業を見守っていたところ、整備隊長が拾ってきた犬が現れ、荒木少尉が手を差し伸べた。写真は朝日新聞記者が撮影した。出撃は延期となり翌27日、10機で飛び立った。爆弾を足に持つ鷲(わし)をかたどった隊の袖マークは遺書とともに実家に送られ、その後遺族が同館に寄贈した。
同市加世田本町にあった特攻隊員宿舎・飛龍荘の欄間や鬼瓦なども初展示。同館の小屋敷茂さん(75)は「ウクライナだけでなくガザでも戦争が続いている。戦争の悲惨さや平和のありがたさをより深く感じてもらえれば」と話している。
入館料は高校生以上310円、小中学生210円。同館=0993(52)3979。
【万世特攻平和祈念館】万世飛行場は1945年3月に沖縄戦の特攻基地として完成。4カ月間だけ使用され201人が戦死した。戦後は人々の記憶から薄れ「幻の基地」とされた。元隊員の故苗村七郎氏らが慰霊碑建設に尽力。遺品も集め93年5月の開館につなげた。建物は隊員が練習した複葉機・赤とんぼを模した。