「国民を守りたい」と新首相は言うけれど、進まぬ「拉致問題」に被害者家族や支援者のもどかしさは募る 解決できるのは政治の力だけだから「頑張って」と励ますよりも「頑張ります」と行動できる議員がほしい〈2024衆院選かごしま〉

2024/10/04 07:00
本紙ひろば欄を読み上げる参加者を見つめる市川夫妻=9月26日、姶良市の加音ホール
本紙ひろば欄を読み上げる参加者を見つめる市川夫妻=9月26日、姶良市の加音ホール
 北朝鮮による拉致問題はこれまでの選挙で、他の争点に埋没することが多かった。9月の自民党総裁選や立憲民主党代表選でも大きな論点とならず、被害者家族らの落胆は大きい。衆院選を控え鹿児島県内有権者からは「拉致問題こそ政治の力でしか解決できない。選挙で積極的に言及し、解決に向けた機運を高めるべきだ」との声が上がる。

 1978(昭和53)年に北朝鮮に拉致された市川修一さん=当時(23)=の兄健一さん(79)=鹿屋市=と妻龍子さん(78)の講演が9月26日、姶良市の加音ホールであった。2人の話が終わると、参加者の一人が前日の南日本新聞ひろば欄に載った一文を読み上げた。「被害者の帰国を願う青いリボンが議員バッジの隣で泣いているように見える」。自民総裁選で拉致問題解決への意気込みがあまり語られないことを嘆く内容だった。

 投稿したのは南九州市頴娃町別府の女性(80)。27日は自宅で総裁選投開票の中継を見ていた。石破茂氏が演説で「国民を守りたい」と口にすると、女性は画面を見ながら「それなら拉致を解決して」とつぶやいた。立憲民主党の代表選も拉致への言及が乏しかったと感じている。

 市川夫妻とは同世代。街頭の署名活動や各地へ講演に出向く大変さがよく分かる。年金生活で物価高や社会保障など政府に力を入れてほしい政策はあるが、「拉致問題を解決できるのは政治の力だけだ」と優先的に取り組むべきだと考える。「国民の命を守るため、真剣に行動する政治家に投票したい」

 市川夫妻と交流がある薩摩川内市祁答院の男性(59)は、11月の「いむた池マルシェ」で拉致問題解決を求める署名活動を計画する。2002年に実現した被害者5人の帰国は、国民の関心の高まりが後押しした。「政治家や外交を動かせるように、ボトムアップで世論を盛り上げたい」と話す。

 健一さんは市民の協力に感謝する一方で、国会議員から「頑張ってください」と声をかけられると、もどかしさを感じるという。「頑張ります」や「頑張りましょう」と違い、人ごと感がにじむ。「県内の候補者には、日本は拉致を許さない、というメッセージを選挙で打ち出してほしい」

 北朝鮮による拉致の可能性を排除できない特定失踪者の園田一さん=当時(53)、トシ子さん=同(42)=夫妻の長女、前山利恵子さん(76)=鹿屋市=は政治家の党利党略にうんざりしている。「権力争いばかりで拉致問題を置き去りにする政治家の姿はもう見たくない」

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