議場に姿を現した尾辻秀久氏=11日、国会
参院は11日午前の本会議で、尾辻秀久氏(84)=鹿児島選挙区=の議長辞任を許可した。体調不良を理由に8日、長浜博行副議長に辞任願を提出していた。後任に自民党の関口昌一氏(71)を選出した。
議場では尾辻氏の辞表が読み上げられ、異議はなく認められた。新議長選出後、山東昭子氏が「与野党の垣根を越えた幅広い人脈と豊富な経験で、本院の公正な運営に尽力し、重責を担ってきたことに深い敬意を表す」と謝辞を述べた。
尾辻氏は2022年8月、鹿児島から初の参院議長に就任。昨年、腰部を圧迫骨折した後も、国会の議事運営や行事への出席を続けていたが、最近になって痛みが強まり辞意を固めた。今期限りで政界を引退する意向で、任期の来年7月まで議員活動を続ける。
尾辻氏は午後から本会議に出席した。辞任について「任期途中になったのは残念だが、力一杯やった。これも天命だろう。腰の痛みはずっと続いていた。全力でやったので、思い残すことはない」と話した。
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尾辻秀久参院議員(84)=鹿児島選挙区=が体調不良を理由に任期途中で議長を辞任した11日、鹿児島県内の政界関係者からはねぎらいや惜しむ声が相次いだ。
同じ鹿児島選挙区選出の野村哲郎参院議員は、互いに父親を戦争で亡くした遺族として、長く親交を深めてきた。「記名投票で登壇するときは、『頑張ってください』という気持ちを込めて議長席に目で合図していた。本人が一番、最後までやり遂げたかったのではないか」と気遣った。
川内博史衆院議員(鹿児島1区)は、ドミニカ共和国への日本人移住問題の早期解決に共に取り組んだ。2006年7月の2回目の現地訪問の際、尾辻氏が内閣総理大臣の書簡を読まず、移民の前で土下座しておわびした光景が強く印象に残っている。「政治家・尾辻秀久の真の姿を見た。多くの方が涙を流して謝罪を受け入れた」と振り返る。
10月の衆院選後は参院議員会館で面会した。「最近の政治は殺伐としているので愛ある政治にしたい」と言うと、「そうだ、そうだ」と応じたという。「古き良き自民党を体現していた。一本気のいわゆる薩摩人。議長辞任はとても残念だ」と話した。
尾辻氏と1979年の県議初当選同期で、社会福祉法人恵会(鹿児島市)の松村武久理事長(86)は「鹿児島から初めて議長を務めたのは非常に誇り。お疲れさま」とねぎらう。尾辻氏の議員活動は来年7月まで。「高齢者福祉施設は人材不足など課題が多い。最後まで力を尽くしてほしい」
塩田康一知事は、物価高対策や能登半島地震への対応はじめ「重要な法律の制定や予算議決の議事を主宰し、三権の長として重責を果たされた。引き続き、県政発展のためお力添えいただきたい」とコメントした。