ふるさと納税活況の裏で…住民税流出止まらず 地方の自治体も危機感

2022/08/10 11:25
志布志市のふるさと納税特設サイト。人気ランキングや特集で返礼品の見せ方を工夫している
志布志市のふるさと納税特設サイト。人気ランキングや特集で返礼品の見せ方を工夫している
 総務省が発表した2021年度のふるさと納税自治体別受け入れ実績で、鹿児島県内の総額は全国4位の400億2349万円だった。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要が堅調で、県と25市町村が前年度より多く集めた一方、外部への寄付の増加に伴う住民税の流出に、危機感を募らせている自治体もある。

 受け入れ実績の県内トップは2年連続となる志布志市で52億9767万円。620以上の返礼品をそろえ、八つのサイトを活用する。ウナギや精肉類が人気で、返礼の約8割を占めた。

 「ブランド力を上げるためにPR動画やブランドマークを制作し、寄付者への返礼品発送時のメール連絡などきめ細かな対応でリピーターが付いている。在庫確保の徹底など事業者の協力も大きい」と担当者。

 2位は南さつま市の45億5060万円。返礼品は約600あり、こちらも人気は肉類だ。

 3位の大崎町(43億8514万円)は、寄付件数が断トツで31万件を超える。70事業者の約700品目と返礼品の種類が豊富で、2000円の寄付から返礼品があるお得感もあって、リピーターも多い。担当者は「SNS(交流サイト)の活用や、露出の多い芸能人ら町ふるさとPR大使を通じて、特産品の魅力をさらに発信していきたい」と語る。

 宇検村は42位の1575万円ながら、前年度比2.42倍と最も伸びた。定番の車エビや黒糖焼酎に加え、担当者は「パッションフルーツなど予約注文を始め、数個しか出せないという品も手間を惜しまず紹介した。伸びしろは大きい」と明かす。

 ふるさと納税は1年間に寄付した分について、翌年度に住民税と所得税が控除される。特に地方税である住民税の控除は、外部への寄付者が多い都道府県や市町村にとって予定した税金が入らないことを意味する。22年度は県全体で31億2754万円を見込み、このうち県が12億5102万円。市町村別では鹿児島市が11億3598万円と最多で、霧島市1億3842万円、鹿屋市1億514万円と続く。流出分の75%は翌々年度に地方交付税で返ってくる仕組みとはいえ、税収が減ることには変わりはない。

 鹿児島市ではふるさと納税をする市民が年々増加しているが、同市の受け入れ実績は21年度5億5491万円にとどまった。

 「税収減を食い止めるため『ふるさと納税を控えて』とも言えず、本市への寄付額を伸ばすことでしかカバーできない」と市民税課。物だけでなく体験事業など“こと”の返礼を充実させて寄付を伸ばしたいという。22年度は返礼品の種類を前年度末から2割程度増やし、350程度にする予定だ。

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