感染防止衣や手袋を素早く身につけ、救急車に乗り込む救急隊員=17日午後、鹿児島市天保山町の鹿児島市消防局中央消防署中央本署
鹿児島県内で新型コロナウイルスの新規感染者が連日4000人を超え、コロナ感染の救急搬送も増えている。搬送先がすぐに決まらないケースが目立ち、救急隊は熱中症疑いの出動にも追われる。感染リスクと隣り合わせのなか、昼夜を問わず現場に向かう鹿児島市消防局中央消防署中央本署(天保山町)を17、18日取材した。
同署は救急車1台を保有し、救急隊は3人一組で午前8時半から24時間交代で勤務に当たる。
17日午前9時40分、最初の「出場指令」が入った。感染防止衣、高性能マスク、ゴム手袋を身につけ出動。直後、市消防局の通信指令センターから、現場近くを走行中の救急車と出動切り替えの指示を受けた。引き返している途中の同50分、次の指令が舞い込んだ。
患者は15日夜から食欲不振や喉の痛み、微熱症状がある90代女性。「ワクチン接種状況は」「周囲でコロナ感染者はいないか」。同居する娘と車内で連絡を取りながら急行する。移動中の情報収集は、適切な処置だけでなく、患者との接触時間短縮や迅速な搬送のために欠かせない。
かかりつけ医の受け入れは断られ、3件目に連絡した病院に搬送した。病院で車内の消毒を済ませ、署に戻ったのは午前11時過ぎ。手袋や感染防止衣からしたたる汗を拭い、一息ついたのもつかの間、同45分、3件目の指令が入った。
向かったのは3人家族全員がコロナに感染している20代女性宅。通報の1時間前からめまいや息苦しさに見舞われていた。隊員の1人が女性の血中酸素濃度や体温を測る。感染者の搬送先は保健所が指定しており、受け入れ可能な病院が見つかるまで時間を要した。搬送できたのは出動から約1時間後だった。
この日の昼食は午後1時半過ぎ。「指令が相次ぎ、夕方まで食事を取れないこともある。救急活動は体調管理が大切。車内に水を持ち運び、補給している」と久松徹消防士長(36)。
猛暑が続き、高齢者を中心に熱中症疑いの搬送も昨夏を上回る。発熱や倦怠(けんたい)感などコロナと共通する症状があるため、現場で判断するのは難しい。中尾博紀消防司令補(53)は7月にはコロナと熱中症を併発する患者もいたといい、こまめな水分補給や適切な空調利用を求める。
夜間も約3時間おきに出動要請は続いた。18日午前8時半の勤務終了までに計10件。うち5件がコロナに関連するものだった。
中尾司令補は24時間勤務の疲れも見せず力を込めた。「出動回数の増加に対し、医療機関の協力で搬送が困難になるケースは抑えられている。救急車の適正利用を心掛けることは大切だが、本当に必要と判断した時は迷わず呼んでほしい。市民と一緒にコロナを乗り越えていきたい」