キオビエダシャクの幼虫(鹿児島県森林技術総合センター提供)
鹿児島県内で、ガのキオビエダシャクの幼虫が、住宅の生け垣に使われるイヌマキ(ヒトツバ)の葉を食い荒らす被害が増えている。自治体への相談は4~7月で11市町82件と年度途中ながら、昨年度の53件を上回り、過去3年で最も多い。このうち、鹿児島市は59件と突出している。
8月下旬、鹿児島市吉野町の住宅街。生け垣用に十数メートル並ぶイヌマキは食害で葉が朽ち落ち、茶色い枝だけになっていた。その周りを羽に黄色い帯がある成虫が十数匹飛び回っていた。近くの徳重亮子さん(85)は「こんなに多い年は初めて。幼虫が一斉に糸を垂らして下りてくるのは気持ち悪い」と話した。
被害の多さについて、県森林技術総合センター(姶良市)の片野田逸朗・森林環境部長は「キオビエダシャクは低温に弱く、暖冬でさなぎが冬を越したのが一因」と説明する。春から秋にかけて3、4回発生し、年内に新しい繁殖サイクルに入る可能性がある。
防除には、幼虫に気付いた時点で葉全体に薬剤を散布するのが有効だ。
薬剤は各家庭で購入が必要だが、鹿児島市は市内各地の農林事務所などで噴霧器を貸し出し、薬剤の紹介など相談に応じている。本年度は貸し出しが延べ26台と昨年度の13台から倍増している(31日現在)。
イヌマキが市木である南さつま市は自治会に薬剤購入を補助する数少ない自治体。農林振興課の白窪勝豊課長は「成虫になると飛び回ってしまうので幼虫段階での駆除が必要。空き家での発生も多く、地域での一斉散布が効果的」と語る。