3種類ある利用証
「身障者用駐車スペースに健常者が車を止めるため、障害者が使用できない」との声が、南日本新聞の「こちら373(こちミナ)」に届いた。県がパーキングパーミット制度(身障者用駐車場利用証制度)を導入して12年。鹿児島市内の駐車場を回ると、利用証を提示していない車が目に付く。県民の理解と協力はまだ十分とはいえないようだ。
8月中旬の平日午後、鹿児島市の大型駐車場10カ所を回った。障害者区画の利用証はルームミラーなど外から見えやすい場所に置くルールだが、掲示していない車が3分の1ほどあった。有無を分かりにくくするためか、逆向き駐車の車も。
障害者用は施設の入り口に近く、普通より広い。利用者の男性(74)は「雨の日は明らかに健康な若い人の駐車が目立つ」。足が不自由な40代女性は「利用証のない同じ車が常に止まっていることもある。せっかくの制度が役に立っていない」と嘆く。
県は同制度を2009年に導入。協力事業所は1914に増え、駐車区画数は4213に倍増した。だが、鹿児島県脊髄損傷者会会長の前田究(きわむ)さん(49)は「車いす用が埋まっていて、諦めることはよくある」とため息をつく。
車いす用は通常より広い幅3.5メートル以上が必要なため、特に数が少ない。前田さんは「マナー向上はもちろん、車いす駐車場が増えてほしい」と訴える。
駐車場約1200台中17台を身障者用にしている同市宇宿2丁目のオプシアミスミはマナー向上や制度の周知に取り組む。
「利用証のある車両のみ駐車を」という館内放送を繰り返すほか、利用証のない車には掲示のお願い文書を置くなど対策を取る。さらに店独自で当日だけの利用証も発行。副支配人の愛甲健さん(46)は「本当に必要な方が使いやすい環境を整えていきたい」と話す。
商業施設にとって駐車場利用者はお客。見た目で障害の有無が分からない場合もあり、マナー違反を正面から注意しにくい面もある。また手続きの必要性や掲示ルールを知らない高齢者らもいる。思いやりと善意で成り立っているだけに、幅広い理解と協力が欠かせない。
■パーキングパーミット制度
障害者らの駐車スペースを確保する制度。利用証は3種類あり、緑は障害者や介護が必要な高齢者などで4万136枚、赤は車いすを常時使用する運転者で397枚、オレンジは妊産婦やけが人など1万6012枚(21年3月末現在)