スパイと非難されても平和のために…渡米の絵本作家・八島太郎らが作成、降伏諭す反戦ビラ

2022/08/15 10:00
トルーマン米大統領名で無条件降伏を呼び掛ける反戦ビラ
トルーマン米大統領名で無条件降伏を呼び掛ける反戦ビラ
 「からすたろう」などで知られる絵本作家の八島太郎(本名・岩松惇、1908~94年)らが太平洋戦争中、日本軍に向けて作ったとされる反戦や終戦を求めるビラが鹿児島県南大隅町根占で保管されている。持ち主の元町文化財保護審議委員、棈木義行さん(74)=根占山本=は「八島らが日本国民を思い、戦争に反対していた歴史を伝えたい」と話す。

 南大隅町出身の八島は絵の勉強のため、39年に渡米。44年に米国の戦略情報局に雇われ、日本兵に向けて投降を呼びかけるビラを作成した。戦争を早く終わらせ、平和な時代のために生きようと訴える内容だったが、日本では「米国のスパイ」と非難され続けた。

 棈木さんが保管する2枚のビラは10年ほど前、霧島市の骨董(こっとう)市で見つけた。トルーマン米大統領の写真付きで「日本國民諸氏」から始まる文面(縦14センチ、横21センチ)は、国立国会図書館に所蔵されているビラと同じ構図。「無條件(むじょうけん)降伏は日本國民の抹殺乃至(ないし)奴隷化を意味するものに非(あらざ)る」と、家族や地域のために降伏するよう求めている。

 「日本の兵士に告ぐ」と書かれたビラ(縦21センチ、横11センチ)は、裏面に「日本は最早(もはや)敗北したのも同様です」と諭すように書かれている。棈木さんは「人間愛に満ちた文面は、八島の影響を受けていると感じる。ビラを見て孫たちも戦争の悲惨さを知ってほしい」と語った。

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