巧みな綱さばきで「かりなきよ」を落ち着かせる前田龍馬さん=8日、霧島市牧園
若き後継者として期待される大学生が8日、全国和牛能力共進会(全共)の“花形”6区に立った。肝属地区から父・前田龍二さん(46)が出品した種牛の引き手を務めた龍馬さん(19)だ。5年前に県の最終予選会で敗れた悔しさをバネに、自ら選んだ愛牛「かりなきよ」とともに夢見た舞台をつかみ取った。
「とにかく楽しかった。練習の成果が全て出せた」。審査を終え牛舎に戻った龍馬さんは笑顔を見せた。
前回の宮城大会の予選に挑んだときは中学生だった。部活動にも入らず、授業が終わると自転車で牛舎に直行。ひたすら牛を磨き上げたが、惜しくも本大会の切符は逃した。
その後、共進会で好成績を残している牛の姿形や血統を研究した。昨年春、県外の大学へ進学したが、授業の合間を縫って同年12月、肝属中央家畜市場で開かれた競りに参加。自ら選んだのが「かりなきよ」だ。「この牛しかいない」と直感したという。
夏休みに入った今年7月、東串良町の実家に帰省。8月末の最終予選会に向けて調教の猛特訓を始めた。運動やシャンプーも含め毎日4~5時間を費やして愛牛との絆を深め、出場をつかみ取った。「等級決定の審査にも気持ちを新たにして挑む。餌や水の量を調整してコンディションを整え、しっかり立たせる」と誓った。