自由な服装で登校する生徒たち=鹿児島市の鴨池中学校
女子生徒用のスラックスなど多様性を尊重した制服の導入を目指し、鹿児島市の鴨池中学校(生徒数約440人)は8日、私服でも登校できる「鴨池TPOの日」を実施した。一人一人が学校にふわさしい服装を選び考えることで、制服の意義やあり方の議論を深める狙い。生徒主体で約半年かけて企画した。
「その服、すごく似合ってる」「改めて見ると、制服も良いね」。8日朝、私服や体操服、制服と私服の組み合わせなど思い思いの服装をした生徒たちがにこやかに言葉を交わし、校門をくぐった。
「TPOの日」は制服での登校も可能で、時や場所、場合をわきまえた服装選びが求められる。既に同様の取り組みを導入した大分大学附属中学校とのオンライン意見交換や、身だしなみに細心の注意を払うホテル従業員からの聞き取りを経て、初めて実現させた。私服登校が57%、制服は19%、体操服16%だった。
有村忠裕校長は「一部の生徒だけでなく、学校全体で取り組むことに意味がある。いつもより笑顔で明るい子が多かった」。主体性を育むだけでなく、学校生活に楽しみを増やす目的もあるという。
お気に入りのシャツで登校した1年本村陽雲(やくも)さんは「自分らしさを表現できて新鮮。みんなの新たな一面を知れて楽しい」と笑顔。3年藁谷梨(わらがい・りん)さんは「学校と家でめりはりを付けるため制服にした。選ぶ手間が省け、意外と動きやすい利点に気付いた」。同年末廣海斗さんは「普段、話さない人と会話のきっかけになった。髪形の校則も見直すべきだ」と訴えた。
担当の小泉憲一教諭(43)は「校則や制服に守られている一面があることも分かった上で検討を進めたい。自分の学校に誇りを持てる子が増えれば」。中心となって企画した3年肥後寅馬琉(とらまる)さんは「選択肢があることの大切さを改めて実感した。スラックス導入だけでなく、リボンやシャツの色を複数用意するなどを個性を出せる制服を目指す」と話した。