姉が北朝鮮に拉致され45年。弟は街頭署名で関心の薄れを感じる。特に子連れの母親の反応が悲しい。問いたい。「自分の子が被害に遭ったらどうしますか」

2023/08/12 08:03
インタビューに答える増元照明さん=7月25日、東京・銀座の南日本新聞社東京支社
インタビューに答える増元照明さん=7月25日、東京・銀座の南日本新聞社東京支社
 鹿児島県日置市吹上浜で1978(昭和53)年、市川修一さん=当時(23)=と増元るみ子さん=同(24)=が北朝鮮に拉致されてから、12日で45年となった。家族の高齢化と事件への関心の低下が進む中、日本政府は北朝鮮に対話に応じるよう働きかけているが、目立った進展は見られていない。増元さんの弟照明さん(67)=東京都中央区=に、政府への評価や北朝鮮にいる家族への思いを聞いた。

■増元照明さん(67歳)=東京都中央区

 -岸田文雄首相が日朝会談実現に向け、直轄のハイレベル協議を進めると表明した。

 「水面下で実務者が接触したという報道があり、進展への期待もある。だが、解決済みとの主張を続ける北朝鮮のペースに巻き込まれないか、不安のほうが大きい。北朝鮮と関係が深いとされる在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)への厳しい対応などを政府・外務省が交渉で示せるか、注目している」

 -岸田首相は7月、新潟県内の被害者曽我ひとみさんと面会した。

 「拉致問題を政治利用して政権浮揚を狙っているとの評価があるようだが、被害者が帰ってくるなら、正直それでも構わない。被害者家族、特に親世代が高齢化し、本当に時間がない」

 -家族会は2月、「被害者の即時一括帰国が実現するなら人道支援に反対しない」との新方針を決めた。

 「岸田首相の積極姿勢の背景にこの新方針があるようだ。私は家族会の会議の中で明確に反対した。家族の高齢化を踏まえた柔軟な方針転換かもしれないが、そんな甘い対応で長年うそを言い続ける北朝鮮から姉を取り戻せるとは思えない。交渉のハードルをこちら側から下げるべきではない」

 -毎月署名活動を続けている。

 「真夏でも2時間ほど街頭に立つ中、年々関心が薄れつつあると感じる。これまで毎回100筆以上集まった署名が最近は届かないことが多い。特に子連れの母親の反応が薄いのが悲しい。(横田めぐみさんの母)早紀江さんの『自分の子が被害に遭ったらどうしますか』と訴える気持ちが伝わっていないのか、と」

 -連れ去られて45年。姉るみ子さんは今年70歳だ。

 「生きていると信じて活動を続けているが、北朝鮮の食糧事情や医療体制を考えると、事故や病気を含めて最悪の可能性も否定できない。新型コロナウイルスのまん延とワクチン不足を踏まえれば、ここ数年は覚悟することも増えた。だがそれは北朝鮮の狙いでもあるだろうから、絶対に諦めるわけにはいかない」

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