【墓碑銘 鹿児島2023年】20世紀最後の200勝投手/井筒3兄弟末っ子/県下一周駅伝「怪物」/「奇跡のバックホーム」

2023/12/31 15:02
(左)プロ野球史上22人目の200勝を達成した北別府学投手=1992年7月 (右)父の井筒親方を担ぐ井筒3兄弟。左から福薗(鶴嶺山)、中央手前が寺尾、逆鉾=1984年5月、東京・両国
(左)プロ野球史上22人目の200勝を達成した北別府学投手=1992年7月 (右)父の井筒親方を担ぐ井筒3兄弟。左から福薗(鶴嶺山)、中央手前が寺尾、逆鉾=1984年5月、東京・両国
 2023年、スポーツ、文化、政治・経済などの分野で活躍した鹿児島ゆかりの人が亡くなった。それぞれの生きざまに思いをはせ、墓碑銘をまとめた(敬称略、年齢の次は死去または死亡確認の月日)。

●20世紀最後の200勝投手/北別府学
 プロ野球で「20世紀最後の200勝投手」となった北別府学(65歳、6.16)は、鹿児島県出身者で初めて日本プロ野球名球会入りした。旧末吉町(現・曽於市末吉)生まれ。南之郷中学校から都城農業高校に進み、ドラフト1位で広島に入団。抜群の制球力で「精密機械」と呼ばれ、1979年は17勝を挙げ広島を初の日本一に導いた。82、86年に沢村賞を受賞。90年代唯一の「200勝投手」で広島一筋19年。通算成績は213勝141敗。94年に引退した後は野球解説者や広島の投手コーチを務めた。故郷の曽於市などで教室を開き、子供たちに野球の楽しさを伝えた。

●井筒3兄弟末っ子/元関脇寺尾
 大相撲の元関脇寺尾で錣山親方の福薗好文(60歳・12.17)=旧加治木町出身=は細身ながら、激しい突っ張りを武器に活躍した。元井筒親方(元関脇鶴ケ嶺)の父のもと、長兄の元十両鶴嶺山、次兄の元関脇逆鉾とともに「井筒3兄弟」として人気を集めた。幕内在位は史上6位の93場所。通算出場は1795回、860勝を挙げた。39歳で引退し、元小結豊真将の立田川親方や阿炎らを育てた。

●県下一周駅伝「怪物」/浜田安則
 県下一周駅伝の伝説的選手だった浜田安則(77歳、7.2)は旧高尾野町出身。出水高校を経て鹿児島大学に進み、卒業後は教員をしながら長距離選手として活躍した。1万メートルは1971年の日本選手権で優勝、74年のアジア大会も制した。県下一周駅伝は通算44区間を走り区間賞35回。その強さから「怪物」の異名を取った。最終日の加治木-竜ケ水間で79年に新記録を樹立。記録は36年間も破られず、区間は「浜田コース」と呼ばれた。

●「奇跡のバックホーム」/横田慎太郎
 元プロ野球阪神の外野手としてプレーした横田慎太郎(28歳、7.18)は鹿児島実業高校からドラフト2位で阪神に入団。プロ3年目の2016年に「2番・中堅手」で1軍デビューし38試合に出場した。21歳で脳腫瘍を患い闘病、復帰したが視力の異常で19年に引退した。2軍で行われた引退試合では「奇跡のバックホーム」を見せた。その後は日置市で暮らし、講演やコラム執筆などに励んだ。


 県スポーツ協会(旧県体育協会)顧問の高城国昭(71歳、9.14)はかつて専務理事を6年間務め、今年51年ぶりに開かれた鹿児島国体の準備に尽力した。

 鹿児島市の廣津匡一(80歳、1.12)は長年陸上の指導に携わり、鹿児島女子高校を全国高校総体で2度女子総合優勝に導いた。

 鹿児島国際大学名誉教授の三木靖(86歳、11.17)は、生涯現役の城郭研究者として、精力的に現地調査や執筆、講演を続けた。鹿児島城(鹿児島市)の再評価にも関わり、3月の国の史跡指定につなげた。戦国島津氏の実像にも史料から迫った。東京都出身。第71回南日本文化賞。

 南九州の中世史が専門の五味克夫(98歳、10.10)は、維新史中心の鹿児島で、鎌倉幕府の御家人や南九州の在地領主、戦国島津家に光を当てた。史料の重要性を説き、県の「鹿児島県史料」の編さん事業をけん引した。愛知県出身。鹿児島大学名誉教授。第42回南日本文化賞。

 随筆かごしま社代表だった上薗登志子(88歳、10.19)は、郷土文芸雑誌「随筆かごしま」を2011年まで34年間発行し、地方の出版振興に貢献した。

 鹿児島女子短期大学名誉教授の外西壽鶴子(92歳、8.26)は、調理学を研究。多くの栄養士を育て、食の大切さを伝えた。

 俳優・スーツアクターの薩摩剣八郎(本名前田靖昭、76歳、12.16)は出水市旧高尾野町出身。平成ゴジラシリーズでゴジラ役を演じた。

 全国商工会女性部連合会会長を務めた林麗子(95歳、1.17)は、県商工会婦人部(現県商工会女性部連合会)を発足させ、県内各地の商工会婦人部設立に奔走した。県連会長を53年、全国連会長を15年務め、女性のカリスマリーダーとして活躍した。

 農学博士の坂井健吉(98歳、7.1)は、鹿児島市にあった九州農業試験場甘藷(かんしょ)育種第1研究室などに勤務し、サツマイモの品種「コガネセンガン」を生み出した。1966年に品種登録され、今も芋焼酎の原料として欠かせない。

 明石屋菓子店会長の岩田泰一(84歳、1.10)は、県菓子工業組合理事長などを務め、「かるかん」の安定生産に注力。県中小企業団体中央会長も務めた。

 首長経験者では、元出水市長の矢野克視(93歳、4.9)、元東串良町長の北園洋一(86歳、3.1)、元牧園町長の木原数成(95歳、7.17)が亡くなった。

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