来年10月開催の全国和牛能力共進会をPRする大会マスコット「かごうしママ」=鹿児島県庁
2022年に鹿児島で開かれる全国和牛能力共進会(全共)まで、6日であと1年となった。「和牛のオリンピック」といわれ、全国和牛登録協会の主催。県や同協会県支部などでつくる全共県推進協議会は、団体優勝した17年宮城大会に続く連覇を目指し、代表牛の選抜を進めている。
5年に1度開かれ、第12回となる鹿児島大会は22年10月6~10日、霧島市牧園と南九州市知覧である。種牛、肉牛の両部門と、特別区(高校・農業大学校)に全国から計459頭が出品される予定。延べ40万人の来場が見込まれ、県などはPRブースを設け「鹿児島黒牛」の認知度アップも目指す。
■前回の宮城大会 「チーム鹿児島」で頂点に
4年前の第11回宮城大会で団体優勝を果たした鹿児島県は来年、並み居る強豪を迎え撃つことになる。王座奪還に燃える宮崎、種牛を中心に安定した成績を残す大分、和牛のルーツである岡山や鳥取などの中国勢。各産地は着実に改良を進めており、連覇への道のりは甘くない。
全共は高度経済成長期まっただ中の1966年に始まった。牛肉消費が伸びる一方、和牛はまだ農耕や運搬にも使われていた。食用に改良するため、産地間で競い合わせて肉質や飼養管理技術の底上げを図りつつ、目指すべき理想の肉用牛を全国の生産者に示す狙いがあった。
審査は、優れた遺伝子を持つ種雄牛や子を産む繁殖牛の「種牛部門」と、肉質の「肉牛部門」がある。大会テーマに沿って10前後の区分に細分化され、日本中からえりすぐりの牛が出品される。「和牛のオリンピック」といわれるゆえんだ。
全国最多の黒毛和牛33万4300頭(2021年)を飼う鹿児島は上位入賞の常連。産地としては後発県ながら成績を伸ばし、前回9区分のうち四つを制し、名実共に「日本一」に輝いた。
苦汁をなめた時期もある。種牛部門の六つで1席に立ち産地の実力を証明した02年の第8回大会以降、お隣の宮崎に主役の座を奪われた。第10回大会では、3位の大分に1点差まで迫られた。
2大会連続の不本意な結果は県勢に火を付けた。改良に一層注力し、長距離輸送対策や牛を美しく見せる調教、応援の仕方まで一丸となって宮城大会は臨んだ。それまでライバル視し合っていた県内各産地がチームとしてつかんだ勝利だった。
地元開催となる次回は負けられない戦いだ。「チーム鹿児島」で再び頂点へ挑む。
■「日本一」効果 鹿児島黒牛の知名度アップ
全共は全国の和牛産地がしのぎを削る。2007年の鳥取大会での団体賞創設後、県別対抗戦の色合いが一層鮮明になり、消費者の注目も高まっている。
「日本一」の称号は知名度アップに効果は絶大だ。前回の宮城大会で団体優勝した日の鹿児島県のフェイスブック投稿は、1日で閲覧数が3万件を突破。テレビや新聞などメディアに引っ張りだこになり、消費者の認知度がいまひとつだった鹿児島の和牛が、歳暮商戦で人気を集めた。
和牛のうまさは海外でも知られ、輸出にも弾みがつく。県は海外バイヤー向けのリーフレットに「Japan's Best」と書いて県産牛を売り込んでおり、連覇すれば強力な追い風となる。