葉山港近くで建設が進む作業員宿舎(右)=7日、西之表市馬毛島(小型無人機で撮影)
鹿児島県西之表市馬毛島への米軍空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と自衛隊基地整備計画で、防衛省は今月、島東部・葉山港の海底を掘り下げるしゅんせつ工事を始めた。これとは別に、基地関連の工事契約は2022年度に入って敷地造成や駐機場、燃料施設など計約593億円に積み上がった。八板俊輔市長と塩田康一知事は計画への賛否を明言しておらず、地元の同意を得ないまま巨大事業の既成事実化が進んでいる。
葉山港は基地関連資材の搬入拠点となるが、同省は国有地の管理用道路整備(事業費約90億円)の一環で「基地とは別」と位置付け、しゅんせつを環境影響評価(アセスメント)の対象外とした。市と県は「漁業者の安全確保」などを理由に同意・許可した。
FCLPと基地整備の計画を巡っては、同市をはじめ関係5市町の首長が今月15日までに県へ意見を提出した。県のアセス専門委員の意見なども踏まえ、塩田康一知事は10月17日までに同省へ知事意見を出す。同省は年度内にアセス手続きを終え、基地本体に着手する考えだ。
全ての施設の完工は4年程度とするが、FCLPに必要な滑走路や航空保安施設は約2年半での完成を目指す。できるだけ早期に訓練を移転する意向で、FCLPに関する事業は先行して発注している。
契約済みの基地関連工事は馬毛島島外で部材を製作し、着工に備える。葉山港のしゅんせつは来年3月をめどに完了予定。港に大型船が入れるように整備され次第、同省は造成や滑走路整備を加速させる。
これまでの契約の内訳は、敷地造成357億5000万円▽管制塔新設(機械、電気、建築)52億8100円▽通信局舎建築20億3900万円▽地中式の燃料貯蔵施設整備50億500万円▽燃料施設の機械整備80億9600万円▽駐機場舗装30億2000万円-など。
このほか、汚水処理場や調整池、航空灯火設備、通信線路、発電設備、種子島の用地買収などを進める。基地関連の契約は年度内だけで3000億円以上の見込み。電力や通信の海底ケーブル敷設は民間事業者に負担金を支払う契約を結び、並行して工事している。
さらに国土交通省に支出委任する形で仮設桟橋や係留施設、滑走路に関する詳細検討も随意契約済み。今後、これらの港湾や滑走路など巨額の整備関連費も見込まれる。基地全体の予算規模について同省は「詳細検討の中で精査しているため、回答は困難」としている。