長さ8センチ超の歯化石を発見した石川県白山市へ。巨大獣脚類本体の化石が眠っているはず。手取川をさかのぼった崖の下で発見したのは…。新種の可能性も!

2023/08/21 11:58
恐竜博2023で展示されている体長約9メートルのゴルゴサウルス。筆者が見つけた白山の獣脚類とほぼ同じサイズではないか=7月、大阪市自然史博物館
恐竜博2023で展示されている体長約9メートルのゴルゴサウルス。筆者が見つけた白山の獣脚類とほぼ同じサイズではないか=7月、大阪市自然史博物館
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 2008年に石川県白山市の手取川の河原で採集した、巨大な獣脚類の歯化石。発見地の上流には約1億3千万年前の白亜紀前期の手取層群(石川や岐阜など4県にまたがる地層)が広がっており、本体の化石がまだ眠っているはずと私はにらんでいました。国立公園の中ということもあって実現しませんでしたが、「いつか発掘調査を行いたい」と長らく考えていました。

 願いがかなったのは今年5月。環境省に調査計画を申請して約半年、何度もやり取りした結果、許可が下りました。相棒は、鹿児島県長島町の獅子島調査でおなじみの東京都市大学の中島保寿准教授です。

 6月初旬の3日間、15年ぶりに白山に入りました。白亜紀層(手取層群)をうがつ川の両岸は、鉄分の多い陸生層(陸地に堆積してできた層)を示す赤い壁が続きます。歯化石が含まれていた母岩にはテトリニッポノナイアという特徴的な二枚貝が含まれていたため、今回も、この貝が見られる地層をまず探していきました。

 河原を6キロほどさかのぼった崖の下で、ついにこの貝を発見しました。貝が落ちてきたと思われる崖をよじ登り、地層を掘り込んでみると、多様な淡水二枚貝の化石がザクザク出てきました。

 「これは有望な産地だ。脊椎動物の化石も出てくるに違いない」と確信しました。

 案の定、掘り出した岩の塊を小さく割っていくと、カメの甲羅の化石が飛び出てきました。表面のあばた模様はスッポンの仲間のようですが、装飾の粗さなど見慣れない特徴があり、新種の可能性もありそうです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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