コロナ全数把握見直し 医療現場「負担減る」 今は…患者情報入力に日曜出勤「スタッフ疲れ切っている」 届け出どこまで?判断困惑の懸念も

2022/08/25 07:30
患者情報の入力作業について説明する医師=24日、鹿児島市のかごしまたんぽぽ小児科
患者情報の入力作業について説明する医師=24日、鹿児島市のかごしまたんぽぽ小児科
 新型コロナウイルス感染者の発生の届け出を自治体判断で高齢者らに限定できるようにする方針が示された24日、鹿児島県内の医療機関からは「業務の負担軽減になる」と歓迎の声が上がった。一方、保健所の健康観察につながる届け出の対象患者は医師に委ねられることになり、専門家は「判断が難しく困惑するのではないか」と指摘する。

 政府方針では、法律で義務付けられている感染者全員の発生届を、高齢者や入院が必要な人、重症化リスクがあり投薬が必要な人などに絞れるようにする。対象外の感染者も、発生数を報告する形を取る。

 鹿児島市のかごしまたんぽぽ小児科では、1日に30~40人の感染者の氏名、連絡先などの情報を、政府の情報共有システム「HER-SYS(ハーシス)」に入力している。作業には1時間以上かかり、スタッフの帰宅はいつも午後9時過ぎ。休診日の日曜にも出勤している。

 山元公惠院長は「時間外の業務量が増えてスタッフは疲れ切っている。負担が減れば本来の業務である医療により専念できる」と「全数把握」見直しを喜ぶ。

 県医師会の池田琢哉会長は「医療機関の負担軽減につながり大賛成」と評価。しかし、65歳未満で基礎疾患がない人は保健所の健康観察の対象から外れることを懸念し、「重症化リスクがないわけではない。各医療機関が責任を持って経過観察することが求められる」と語る。

 「高齢者らが多い内科の負担は大きく変わらないのでは」と話すのは感染症に詳しい鹿児島大学大学院の西順一郎教授。「どこまでの患者を発生届の対象とするか、線引きが難しく判断に困る医療機関も出てくるだろう」とする。

 その上で「全国で1日に20万人以上の患者が出る感染症を全数数える意味はない」と強調。「定点把握に切り替えて患者はかかりつけ医がフォローし、保健所は高齢者施設の集団感染予防に専念するよう見直すべきだ」と提案した。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >