恐竜が駆け回る白亜紀の獅子島のイメージ図(C)川崎悟司
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
「鹿児島県で恐竜発掘」というと、以前は夢物語と思われてきました。陸地の大部分が火山からの噴出物に厚く覆われており、化石そのものが少ない地域だと考えられていたからです。
ところが2000年代以降、長島町の獅子島や薩摩川内市の甑島列島に分布する中生代白亜紀(地質時代の一区分、約1億4500万年前~約6600万年前)の地層から、クビナガリュウや恐竜、翼竜などの大型脊椎動物の化石が続々と発見されるようになりました。この3月にも、獅子島の海岸に分布する白亜紀の地層から、たくさんの恐竜の骨が含まれる「ボーンベッド」と呼ばれる地層が発見されたことが話題になったばかりです。
今では鹿児島県は、国内外の古生物学者が熱い視線を送る、恐竜をはじめとする古生物研究の最前線になっているのです。
特に、私が長年発掘に携わる獅子島に関しては、古生物史に残る発見が続いています。20~21年には世界で初めてクビナガリュウ化石の喉からペリット(のみ込んだ餌の消化できない部分の塊)化石が発見され、クビナガリュウのすぐ近くから翼竜の化石が見つかりました。そして、今回の恐竜のボーンベッド! 国内の恐竜のボーンベッドとしては福井県の勝山や兵庫県の丹波が有名ですが、それに匹敵するものが鹿児島にも埋蔵されていたのです。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2020年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「恐竜王国!鹿児島県」より)