薩摩翼竜の復元模型を持つ古田悟郎さん。「人が造らないマイナーな生き物にも光を当てたい」=大阪府門真市の海洋堂
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
精巧なフィギュア作りで知られる海洋堂(大阪府門真市)の造形・塗装師である古田悟郎さんを紹介します。古生物を通じた長年の友人であり、私が長島町の獅子島で発見したサツマウツノミヤリュウや薩摩翼竜の復元模型も彼の仕事です。
自然が好きで、古生物を含めた生き物が得意という古田さん。「余白の部分を想像で補うのが、造形師の知識と腕の見せどころ」と、誰も見たことがない古生物を今によみがえらせます。
彼が手がける模型はまるで生きているよう。秘策を聞くと「ポーズが重要で、生き物には必ずかっこいい決めポーズがある。カメやトカゲなど20匹近く飼育していて、毎日見ていると分かるんです」と教えてくれました。
クビナガリュウは古田さんの大好きな古生物。「長い頸、固定された胴体、オールのようなひれなど、今いるどの生物にも当てはまらない」と、魅力を語ります。鹿児島県立博物館の化石標本と共に展示しているサツマウツノミヤリュウの模型は、飼っているナガクビガメを参考に復元したそうです。
薩摩翼竜を復元するにあたり、古田さんは「翼竜は鳥の前に空へ進出した、初めての脊椎動物。鳥が筋肉というエンジンのある飛行機なら、翼竜はグライダーのようだったろう」と考えました。苦労したのは、翼のたたみ方。翼と一体化した4本の脚で歩いていたので、コンパクトにたためないと引っかかる。アホウドリなど大型の鳥のように、後ろに完全にたためる形状としました。
体は、フラミンゴのように赤い色素を含む餌の影響を考えてピンク色にし、翼には保護模様の黒いしまを入れました。古田さんは「塗装師は映画業界でいえばメーキャップアーティスト」と例え、「塗装次第で同じ型でも全く別物に変わる。肝はいかに質感を出すか」とこだわります。
今後取り組みたいのは太古のカメの復元だそう。「海、川、陸と多様な場所に適合した、いろんな進化の過程を表現したい」と意気込んでいます。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)