かつて米軍機の標的だった…サトウキビ畑にポツンと立つ柱 外壁に今も残る無数の弾痕 奄美大島・龍郷

2023/01/06 11:28
無線塔頂上近くに残る機銃掃射跡=龍郷町赤尾木
無線塔頂上近くに残る機銃掃射跡=龍郷町赤尾木
 鹿児島県龍郷町赤尾木のサトウキビ畑の一角に、見上げるほどのコンクリート柱が1基立つ。かつての無線電話施設「赤尾木送受信所」の送信用無線塔だ。太平洋戦争前の1938年、旧逓信省によって設置され、85年近く地域を見守っている。

 高さ30メートル、最大外周5メートル。内部は空洞で鉄製はしごがある。戦時中、米軍機の格好の標的となった。複数の弾痕が外壁に残る。

 送信、受信所の無線塔が5基ずつの計10基、それぞれの局舎、官舎計15棟があった。戦後は47年に復旧し、62年に役目を終えた。送信用1基のほかに、約1キロ離れた住宅街周辺に受信用2基の計3基が現存する。

 近くの碇山丸雄さん(84)は幼い頃、塔に登った。「頂上の見晴らしが良かった」。父親が送信所に勤めていた碇山孝子さん(88)は「官舎隣の身重の女性が機銃掃射で亡くなり、ショックだった」と振り返る。

 現地を昨年訪れた筑波大学の松井敏也教授(文化財保存科学)は「全体的にしっかりした状態だが、鉄筋がむき出しの箇所があった。早くケアできればいい」と語った。

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