アンモナイト化石の雌雄。見分けるヒントは発見状況、サイズ。「小さい殻に“生”の記憶。何ともいとおしい」。論文を書いた33歳の“風雲児”は思いをはせる

2023/06/12 08:05
テトラゴニテス・ミニムスの雌雄
テトラゴニテス・ミニムスの雌雄
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 私と一緒にアンモナイトを研究している相場大佑博士(33)=深田地質研究所研究員、東京都=を紹介します。人気ゲームのキャラクターと似た化石を見比べる特別展を企画するなど、新しいやり方でファン層を広げている“風雲児”です。今年3月まで北海道の三笠市立博物館に勤めており、私が北海道で採集した化石の鑑定を依頼したのがきっかけで知り合いました。

 相場さんは昨年末、アンモナイトの一種「テトラゴニテス・ミニムス」の雄と雌を見分ける研究論文を発表しました。日本で見つかる約700種の白亜紀のアンモナイトのうち、雌雄が正しく認識されているのはほんの数例と言います。本体の軟体部はほとんど見つかっておらず、化石から性別を判断するのはとても難しいことなのです。

 「きっかけは、見つかる化石はなぜか成熟した大人の個体ばかり。1.3センチと1.8センチの二つのサイズに分かれることに気付いたことでした」と語ります。70個体ほどを調べ、雌雄のペアであると解釈。2021年にドイツで発見されたアンモナイト化石の軟体部には精子とみられる痕跡がありました。小ぶりのサイズだったことや同じ頭足類のタコなども参考に、小さい方が雄である可能性が高いと考えました。

 大人ばかりが見つかるのは生殖のために集まり、そこで役目を終えて死んだのではないか…。「指の先に載るほどの小さな殻に一生懸命生きてきた記憶が保存されていると思うと、何ともいとおしい気持ちになります」と生きざまに思いをはせます。

 実はアンモナイトの腕は軟体部のため本数が正確に分かっていません。今後の研究で「見た目や、どのように生まれてどのように死んだのか。一生の間に海中を回遊したのか、群れを作ったのか、など生態を解明したい」と夢中です。あくなき探求を続ける若手研究者から、大いに刺激をもらっています。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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