会計年度任用職員の辞令(画像は一部加工してあります)
県立高校で美術を教える非常勤講師の男性は、会計年度任用職員になって時給が300円近く下がった。新制度で報酬単価が3区分から一つに統一されたためだ。「事前に通知もなく、ショックだった」。月額で2万円減った仲間もいる。
「ボーナスで補てんされる」と聞いたが、男性は支給されなかった。任期や勤務時間数に条件があり、それを満たせなかったからだ。「教える喜びはあるが、講師の報酬だけでは厳しい」。アルバイトで生活費を補う。
部活動の指導を頼まれる講師もいる。手当を出す市立高もあるが、県立高の場合、講師の報酬は授業と試験作成・採点などに支払う仕組み。学校に独自予算がない場合などは無償ボランティアになるケースもある。ある女性講師は前任者から引き継ぎ書道部を指導する。「生徒が展覧会に出すと言えば放っておけない。教職を目指す若い講師は頼まれたら嫌と言えない。純粋さや善意を利用するようでおかしい」
■同一賃金どこへ
「オリンピックの経済効果を知りたい」「氷河期の地図を探している」。高校の図書館には生徒からさまざまな質問や相談が持ち込まれる。本や資料をそろえ、学びを手助けするレファレンスは司書の仕事の要だ。
このほか、学科・教科の教材準備、読書相談や行事、貸し出しなど、多岐に渡る業務は高いスキルを求められる専門職。だが63の県立高校のうち、34人は任用職員で、主に11学級以下の学校に配置されている。
ある女性司書は大学で資格を取り、勤続10年以上。パートタイムである以外は正規と同じ仕事だ。「どこが同一労働同一賃金なのか」とため息をつく。
ボーナスは出るようになったが、日給制に変わり、月の手取りは15万円に届かない。「奨学金の返済と家賃で半分消える。普通は休みが多いとうれしいはずだが、給料が減るので悲しくなる」
■狭き門
任用職員は事務職にとどまらず、資格や技術が必要な専門職に広がる。正職員の採用は狭き門だ。県内高校で2019~21年度採用の美術・書道・音楽教諭は計10人に満たない。科目によっては採用がない年もある。司書は毎年度1人。
「正規で働きたくても非正規で働かざるをえない」。生徒からみれば同じ「先生」だが、待遇格差は大きい。
非正規教職員を支援する県高教組の水間悦郎書記長(50)は「新制度は非正規を合法化してしまっている。教職員が安心して働ける環境でなければ子どもにも影響が出る」と訴える。(つづく)